ペール・ギュント 神奈川芸術劇場②

一応、この続き。的な気持ち。


次にドーンっと残るのが、

トロルのシーンのドブレ王が言った言葉。

人間は、自分らしく生きる

トロルは、あるがまま生きる


似ているようで似ていない、劇中では朝日と夕日のようなそんな2つと表現されるこの2つ。

自分らしく生きるとあるがまま生きるって、言葉の言い換えのようにも取れるけど、2つ並べて意味を考えた時、確かにすごーく近そうで、意外と遠いことに気付く。

ペールはこのあるがまま生きるの精神でいきてたじゃないかと、老人になり、ドブレ王に再び会った時に言われちゃうこれ。

もし、今誰かに
自分らしく、生きてますか?って聞かれた時、私は、自信持ってYESとは答えられない気がするし。
あるがまま、生きてますか?って聞かれたら、それこそ即答でNOと答えると思う。

自分 ら し く

この難しさね。
らしさって何だろうってなる。
自分らしいなって思ってることって、他人から見ても私らしいって思ってもらえるかと言えばそうでなくて。
逆に他人からの らしさ のイメージの方が実はピンッと来ちゃったりなんて場合もあったりして。

そして、あるがまま生きる。

あるがまま生きれたらどれだけ楽なんだろう。
でも、それってやっぱり人間らしさがなくなりそう。
自分の嫌な所を隠したくて、綺麗に装って、その努力ってめんどくさいけど、それが素敵だったりするわけで。それをするから人間だったりするのかなとか考えたりして。

ドブレ王やトロルからするとペールはあるがまま生きた人生だったと言われる。
次から次へと要らなくなった女を捨て、
奴隷貿易をし、盗品の売買などもし、
道徳とかを無視して自分の利益基準で物事の判断をするからか。
次から次へと思い付くがままに道を進むからか。
周りから予言者と言われれば予言者になり、
皇帝だ!ともてはやされれば皇帝になってみたり、
船のシーンで、
お金をあげると話をしていたのに、相手に妻、子供がいることが分かると自分より一般的に恵まれている事実が気に食わないのか態度を一変させお金を一銭もあげずに…なんてそんな場面もあったりと

でも、結局これって人間が腹の底で思ってることだったり、ふともう一人の悪魔的な自分がヒソヒソ耳元で語りかけてくるみたいなやつなんだよな…って。
ただ、理性とか道徳とかそういう感情から抑えられたり、押し殺されるだけであって。

って思っちゃうと、あるがまま生きるってやっぱり紙一重の所にあるよな〜と。



そして、この流れで



自分を自分であると証明すること



老人になったペールは自分の死に方に直面して、

ものすごい善人は天国

ものすごい罪人は地獄

それ以外はボタンにされる


この3種類があると知って。
ペール・ギュントはそれ以外に当てはまるとボタン職人から知らされてしまう。
そうすると、ペールは罪人になりたくて仕方なくなり、自分の罪を証明してくれる人を探し回る…と。


確かにな〜
それ以外って嫌だよな〜その他大勢と一緒にされて、再利用。
誰しもが自分にとって自分の人生は満足だったって思いたいもんな。

ここで、ドブレ王にお前はあるがままに生きていた、この言葉を胸に刻んで生きていたじゃないかと言われ、それに気付いて居なかったペール。

はたまた、非人道的なことをしたが、ものすごい罪人ってほどじゃないんだよってのも言われ。


自分で勝手に背負っていた十字架も大したことないと言われているような。

アフタートークで白井さんが、内くんとも話したけど、結局どうなったんだろうねと。
ボタン職人は最後、最後の交差点で待ってるよって言葉を残して居なくなるんだけど、
白井さんと博貴との会話の答えは結局お話しはしてくれず。(答え出したのかも分からない)


最後に何十年と待たせ続けたソールヴェイに会った時に、自分を責め立ててくれ!と願ってもソールヴェイの口から出るのは、ペールに対する愛情のみで、、
ソールヴェイからすると生きてるか死んでるかも分からなかった人が目の前に突然現れたんだもんな。

アフタートークで藤井美菜さんがお話ししてたけど

ソールヴェイのような人は実在するか…
少なからず自分は無理だ。と。
けれど、ソールヴェイはきっとペールを待つ、待っている、というその事実が家族も捨て、全てを捨てた女性の唯一の支えだったんだろうと。
それで保ててる部分もあるんだと。

白井さんもソールヴェイは与えてるだけの人では決してない。ソールヴェイもペールから受けているから最後にそれだけの愛情を向けられたんだと。

聖母マリアかのような慈愛に満ちた女性ではない。
意外と芯の強い、自分を持っている女性だったのだと。


ここ含めて、この女性を何十年と待たせたってことが一番愚かだし、罪だと思うな…と思ってしまったり。

でもきっと、これもボタン職人からしたら大した罪にならないのかな〜

ここの考え方も観るたびに変わるポイントだったな。


もうちょっと続く…